「ナナカマド短信を読んで」に刺激され

刀川 M 

 14号にある前川様の投稿に刺激され、お便りする者です。前川様と同様、私も演奏会や合宿のお話はたいそう楽しそうに感じ、一度演奏会に行って見たいものだと思っております。しかし神奈川県藤沢市在住のため所沢までは遠く、なかなか実現できずにおります。また、皆様、相当の腕をお持ちのようで、聞くだけなら兎も角、参加となると到底、太刀打ちできそうになく、むしろ「遠くにありて思う」ままの方が良いような気もします。というのも、私のフルート歴は約30年になりますが、練習量の圧倒的少なさゆえ、進歩は極めて遅速だからです。
 ところで私の場合、「ナナカマド短信」の一番の楽しみは、皆様の書かれる文を読むことにあります。小野田様やTI様の書かれるものは上品、かつ軽妙洒脱で、察するに人生経験豊富で、音楽以外にもさまざまの分野で相当の素養をお持ちの方々ではないでしょうか。また文章の背景には人生を楽しんでおられるような雰囲気が伝わってきて、羨ましい限りです。私もあまり若いとはいえない年齢ですが、フルートを研鑚しつつそのような心境に達せられればと考えております。お二人以外の方々も素晴らしく、たとえば金竹様のダラスでのお話は単なる海外だよりに留まらず、心象に入り込むものです。
 ちなみに14号に同封されていたTI様からの案内状によると、「ナナカマド短信」の定期送付者は五名で前川様はそのお一人だそうですが、私は残る四名のうちの一人です。定期送付者が五名しかいないのには、少々、驚きました。私も人並みのインターネット環境は整えているのですが、なんとなく紙の方が電子メディアにはない雰囲気があるような気がし、「フルートクラブ会報(195号)」以来、会報を保存していることもあって、紙で定期購読をしております。
 いつも「ナナカマド短信」を読むばかりで何も貢献してないのですが、せめてもの罪滅ぼしに会費は遅れることなく納めるようにしております。これからも会がますます発展されますよう、藤沢の地から祈念しております。

(初出:ナナカマド短信15号/2004年10月24日)

室蘭便り

刀川 M 


 北海道の室蘭に在住する刀川(たちかわ)です。ナナカマド短信はいつも楽しみにしていますが、情報は受けるばかりでなく発信もすべきという昨今の風潮に刺激され、投稿するものです。
 私はこれまで人生のほとんどを東京と神奈川で過ごし、社会人になってからは典型的な“神奈川都民”でしたが、故あって昨年4月から室蘭に単身赴任しています。北海道にはスキーや旅行で何度か訪れてはいるものの、個人的には縁もゆかりも無く、しかも生まれて初めての一人暮らしということで、まずはサバイバルが至上命題でした。しかし冷凍食品と電子レンジに代表される近代科学の恩恵により、また他人に親切な土地柄、快適な生活を送っています。もっとも「食の大地、北海道」にいながら冷凍食品ばかりというのも罰あたりのような気がするので、少しづつ食のテリトリを広げているところです。月に2〜3回は上京しますが、大雪による飛行場閉鎖や、列車が熊とぶつかったり鹿を巻き込んだりといろいろとワイルドな出来事が起こり、そのたびに足止めを喰らっています。室蘭は、小樽や函館と混同される方がいるのですが、彼の地ほどお洒落ではなく、製鉄とものづくりの街です。ただ北海道の中では暖かい方で、真冬でも最低気温が4〜5℃位なので、今よりずっと寒かった子供の頃の東京に近い感じがします。
 さて肝心のフルートです。赴任後しばらくは勤め先の空き部屋を利用して独習をしていたのですが、ご多分に漏れずなかなか練習がはかどらない状態が続きました。しかし生活も落ち着いてきたこともありきちんと再開しようと考え、このたびMS様やTI様のお力添えにより先生を紹介していただくことができました。ということで煎じ詰めれば「再開した」ということしか報告できないのですが、いずれ北の地の澄み切った空気を震わせる、朗々とした笛の音を響き渡らせることを夢みている次第です。

(初出:ナナカマド短信28号/2008年1月27日)

室蘭穴埋め便り #1

刀川 M 


 北海道の室蘭に単身在住する刀川です。
 半年ぶりの投稿です。先回は「室蘭便り」としましたが、ナナカマド短信が原稿不足に陥った際に利用してもらえるよう改題しました。
 彼の地の保育所で押しかけボランティアをやっています。押しかけというのは、募集しているわけではないのにやらせて欲しいと頼み込んで始めたからです。もちろん保育士の資格を持っているわけでも、幼児教育の知識があるわけでもありません。単に子供とコロコロ遊ぶのが好きなだけです。ボランティアという形ではあるものの、こっちが遊んでもらっているようなものです。でも所長以下、保母さんやパートの人など女性ばかりなので、少なくともたった一人の男性として希少価値はあるはずです。
 三〜六歳の子供を相手に縄跳びや鬼ごっこなど体を使って遊ぶことが中心ですが、ときどきやりすぎて保育所の先生からあまり激しくしないようにと注意を受けます。大人の世界と同様、男の子の方が幼稚で、来年は小学校に行くという歳の子が「だっこして」と来ます。これに対し、この前女の子から「どうしていつも同じ洋服を着てるの?」「一人でごはん作れるの?」と聞かれました。月に一、二回、土曜の午前中だけですが、遊んだ後は心地よい疲れと、子供との楽しい思い出がほっこりと心に残ります。
 その保育所で、三月にこれもまた押しかけのフルート演奏会をやりました。曲目は以下のとおりです。
  ・愛のあいさつ
  ・LALALU
  ・星に願いを
  ・さんぽ(トトロに出てくる曲)
  ・こぶたぬきつね
 一部、つっかえての演奏でしたがまあまあの出来で、「さんぽ」や「こぶたぬきつね」では一緒に歌ってくれました。嬉しいものです。もっとも、一番反応が大きかったのは片付けるときにフルートがばらばらになることで、「あっ、こわした!」という声があがり、大勢、近くに寄ってきました。本当はここでいたずらっぽいことをして騒ぎたいところですが、お昼寝の前で興奮して眠れなくなると注意を受けそうなので、おとなしく退場しました。
 情操を育てたのかこわしたのかわかりませんが、楽しいひと時を過ごすことができました。

(初出:ナナカマド短信30号/2008年7月21日)

室蘭穴埋め便り #2

刀川 M 


 北海道の室蘭に単身在住する刀川です。先回の投稿日付を見たら、ほぼ一年が過ぎているのに気付きました。全然「穴埋め」の役を果たしてなく、看板に偽りありの状態です。
 さて昨年の夏前になりますが、人に勧められ自転車を買いました。家から職場までバスで15分、徒歩なら30〜40分の距離ですが、天気が許せば自転車通勤も織り交ぜることにしました。雨の日はもちろん、冬は寒くて乗れません。しかし夏の北海道は晴れると気温は上がっても湿度が下がるため極めて快適で、自転車にはもってこいとなります。近所を乗り回すだけでは変化に乏しく、また室蘭は周囲が山に囲まれているのでアップダウンが激しく疲れます。そこで人と一緒に自転車も鉄道に載せ、目的地で自転車を乗り回す「輪行」に挑戦しました。
 まずは洞爺湖一周です。ご存知の通り2008年7月にサミットが開かれた所です。
 私が行った時は終了後で静かなものでした。洞爺湖の周りはほとんど起伏がなく、3時間弱で周れます。八月下旬で紅葉が始まった木々もあり、清涼な空気を感じて極めて快適でした。湖を望む休憩地で、ここで一人朗々とフルート吹いたらさぞ気持ちいいだろうと思いました。そういえばフルートを始めた頃の夢として箱根の仙石原高原で朗々と吹くことを思い出したのですが、そもそもいつまでたっても「朗々」にならず未完の夢です。
 次は、千歳から支笏湖経由で苫小牧まで南下する行程です。ここは自動車道路とほぼ並行している鉄道の廃線を利用した自転車専用道があるので、車に対しては安全です。が、道が単調な上、熊に注意する看板が随所にありました。自動車道は割と車が通っているのでまさかとは思いましたが、車と違って自転車は音がしないので熊とばったり出会ったらと、ちょっと不気味でした。
 ここでの収穫は支笏湖の清流もさることながら、時間つぶしに走った苫小牧港付近で見つけた魚市場です。ホッキ貝専門店や寿司屋があり、一般者も入れるので一度は食べに行こうと思っています。
 最後は函館の近くにある大沼の一周です。距離が短くそれほど時間はかからないのですが、なんといってもそこまでの鉄道運賃が高いのに驚きました。
 室蘭から千歳や札幌方面は幾つか割引運賃があるものの、反対の函館方面はほとんど無く、往復でなんと一万円近く取られました。札幌方面は利用者数が多くバスや自動車などの競合相手がいるからで、しっかり競争原理がはたらいています。
 ‥ということで、今回はほとんどフルートの出番はないのですが、練習はブランクだらけではあるものの続けています。三月にまた保育園での押しかけ演奏を目論んでおり、その練習にも着手しました。また報告、いや穴埋めできればと思います。

(初出:ナナカマド短信33号/2009年4月26日)

室蘭穴埋め便り #3

刀川 M 


 北海道の室蘭に単身在住する刀川(たちかわ)です。ナナカマド短信33号でTI様が「私個人の思い入れではあるが、この短信はなかなか味があり、貴重な刊行物と決め付けている。編集長に協力し、会が続く限り短信の発行を大切に見守っていきたいと思う」と述べられていますが、私もまったく同感です。というわけで室蘭穴埋め便り(3)を投稿しますが、私の場合、編集長の邪魔をしているのではないかとちょっと心配です。
 二月に、たちの悪い風邪を引いてしまいなかなかフルートが吹けない状況が続き、いつも三月に行っている保育所での押しかけ演奏会も中止しました。最近、ようやく体調が回復したのでフルートを手にするようになりましたが、久しぶりに吹いたためか気付いたことがあります。
 一つは、食事は胃ではなく頭でするように、フルートも口でなく頭で吹くべきということです(何を今更‥、と思われる方も多いでしょうが)。私は練習するときロングトーンを○回、曲を○回というように決めています。これは、「練習は気が済むまで」ということにすると、すぐに気が済んで練習を終えてしまうからです。そこで極めてデジタルに回数制にしているのですが、ともすれば回数をこなすことが目的化し勝ちです。そのためたとえばうまくいかない箇所があっても、やり直してたまたまうまくいったらそれでよしとしてしまいます。なぜうまくいかなかったのか、どうすれば良いのか、つまり原因究明がありません。そのため他でも同じ失敗を繰り返してしまい、根本解決になりません。それでも練習を大量にやればそれなりに効果はあるかもしれませんが、先に述べたようにあまり練習をしないため期待できません。そこで(1)うまくいかない原因を探り、(2)改善策を考え、(3)それを記憶し、(4)次に吹くとき記憶を呼び覚まし、(5)注意を払う、というように頭を使うことの必要性に気付きました。しかし言うは易く‥で、これが結構、難しいものです。記憶が不得手なうえ、覚えきれないほどの改善点があるから、なおさらです。
 二つ目は、自分の吹く音色についてです。たまたま会議などを録音する機械で自分の演奏を録音してみたのですが、あまりのひどさに驚きました。これで保育所での押しかけ演奏会をやると、恥さらしだけならまだしも子供たちに音感的に悪影響すら与えかねません。しかし、もしかしたら録音機が悪いのではないかという一縷の“望み”もあります。そこでもっと良い録音機や録音環境でやってみるため、目下、適当な設備を探しているところです。
 三つ目は、練習の楽しさについてです。人間の行いには何かの目的を達成するための手段としてやるものと、その行い自体が楽しく自己目的化するものがあります。たとえば勉強には、資格を取ったり入学試験に受かるためという手段的な場合と、学ぶこと自体が楽しいという自己目的的な場合があります。遊びや趣味というのは基本的に後者だと思うのですが、少なくとも私のフルート練習は、先に述べたように回数をこなすことが目的化してしまい、もっとも大切な「楽しむ」という観点が乏しいように感じます。このような練習法をすべて否定するわけではありませんが、できれば練習そのものが楽しめるようになりたいものです。これについては旨い方法が見つかりません。どなたかご存知の方がおられたら、ぜひ教えていただきたいものです。

(初出:ナナカマド短信35号/2009年10月4日)


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